木の美しさを残す「庭の音」流剪定


  木の美しさを残す剪定とは?

私の基本的な考えはこうです。人の手による剪定で木を美しくするのではなく、木はそもそも美しい。木は放っておけば成長とともに自然と美しくなる。しかし、それでは庭に収まらなくなるので、人の手が必要になる。そこで必要なのが「剪定」です。
(これから剪定のお話を進める上で、その木の花付きや実成りについては、別の機会にお話することにしまして、ここでは省略させていただきます)
木はそれぞれ美しさが違っていて、そこを残し生かしながら小さくすることが剪定です。その美しさとは主に3つあります。枝の美しさ、葉の美しさ、輪郭の美しさ、です。枝の美しさとは、幹から枝先までの、ゆるやかな曲線。葉の美しさとは、2枚以上の葉がつくる立体の集合。輪郭の美しさとは、その木の成熟した固有の形、です。

枝の美しさを大切にしたい木は落葉樹で、代表的なものはモミジです。モミジは枝が最初から直線的に伸びて規則的な間隔で両脇に葉芽が出ます。その芽がまた直線的に伸びてさらに同じように等間隔で脇芽がつきます。これが繰り返され成長します。成長するほど枝はゆるやかにしなり曲線を作ります。これが美しい。モミジは紅葉ばかり注目されますが、この直線と曲線のなす枝の美しさに、庭木としての面白さがあります。葉の美しさを大切にしたいのは広葉常緑樹、代表的なものはクスノキです。クスノキは葉をつける小枝をたくさん寄り添うように伸ばします。それを分離させるとフワフワとしたクスノキの特徴は消えてしまいます。そこで、寄り添そった葉と小枝の集まり(立体の集合)を残す剪定が、この木の美しさを楽しむ方法です。輪郭を大切にしたい代表的なものはサツキツツジです。サツキは葉がとても小さく、また枝もとても細い。新芽の出方も非常に不規則です。そんなサツキの良さというのは、自分の輪郭を乱さずに少しずつ大きくなっていくことです。サツキのおとなしい成長ぶりは、放任させて楽しんでも良いし、形を整えて楽しんでも良い。そこにサツキの素晴らしさがあります。

さて、前述しました3要素を、3角形に表してイメージしてください。 頂点に「枝」( モミジ)、右下に「葉」(クスノキ)、左下に「輪郭」(サツキ)となる3角形です。しかし、ただモミジが枝だけを意識すれば良いのではなく、葉や輪郭の要素ももちろん加味します。そして3種類しか木がないのでは寂しいので、もう3種類足してみましょう。
3角形のそれぞれの頂点の中間にもう1種類ずつ足します。「枝」と「葉」の間に「枝葉」。そこにシマトネリコ、オリーブを置きます。この2つは常緑樹でありながら落葉樹のような枝の構造を持っていて、枝と葉のバランスの良さが面白い木です。 「葉」と「輪郭」の間に「葉輪郭」。そこにコニファーのエレガンテシマ、カイヅカイブキを置きます。この2つは針葉樹でありながら葉が密接しています。つまり葉がとても多いので、そのかたまりそれぞれに輪郭ができます。この複数の輪郭の操作が、この木を剪定する楽しさでもあります。
「輪郭」と「枝」の間に「輪郭枝」。そこにコニファーのブルーヘブン、ヒノキを置きます。これらは葉と枝が同調していて、葉を枝の一部としてとらえると美しさが残せます。直線的な枝と直線的な葉で、どういう輪郭をつくるのか。葉と同調した枝を、どれくらい出して見せるのか。その別れ目が面白さです。

これを時計に見立てると、12時のモミジから始まって、2時シマトネリコ、4時にクスノキ、6時にエレガンテシマ、8時にサツキツツジ、10時にブルーヘブン、という1周になります。この時計のなかで、実際の「庭木」が、どこのバランスに位置するかを感じて剪定します。ここに出てきた木の名前は、あくまで例えですので、同じ名前や種類であっても、その状況によって剪定の仕方は変化します。全部の木を一様、一緒くたに剪定するのではなく、それぞれの固有美が少しでも多く表れるように残るように作業します。

あらためて言いますが、木はそもそも美しい。木は放っておけば自然と美しくなる。しかし、それでは庭に収まらなくなるので、枝を切る「剪定」が必要になる。木が本来もっている美しさ。それを残して枝を切ることを、私は心がけています。

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